右手に剣を、左手に君を
混乱の中で



……結局、無理矢理薬を飲まされ、落ち着いた俺を、全員がホッとして見つめた。


そこから俺は、長い事情を説明しなければならなかった。


千年前の忠信の話から……。


渚が玉藻と迦楼羅に連れ去られ、

草薙剣が、崩壊するまでを。



「マジかよ……」



健太郎が一言。


雅とばあちゃんは、しばらく沈黙した。



「迦楼羅は龍神剣を、無理矢理取り出すと言っていた。

早くしなければ、全てが手遅れになるんだ」



早口で説明する。


するとばあちゃんが、口を開いた。



「行きたいのはわかる。

だけど、あてもなくどこへ行こうって言うんだい?

武器もない、丸腰のお前が」


「それは……」



そうなんだ。


冷静になれば、俺達は奴等のアジトさえ知らない。


そんなものがあるかどうかも、疑問だが。


夢の中で見た、空亡の姿を思い出すと、寒気がした。


全てを飲み込んでしまいそうな、黒い渦。


その中の、希望を絶望に変えていく、恐ろしい赤い目……。


あれが完全復活なんかしたら、人間はたちまちパニックだ。


しかし俺には、もう草薙剣がない。



「……他の武器はないのか……?」



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