右手に剣を、左手に君を
じっと左手を見る。
霊力を集中してみるが、
やはり、自分の中からは何の気配もしなかった。
本当に、失ってしまった……。
「考えてる暇はない。
手がかりなら、学校にあるはずだ」
健太郎の言葉に、ハッとした。
雅も静かにうなずく。
「米倉、小野、そして野田。
彼らに直接話を聞きに行こう」
そうだ。
彼らは、妖と関係している可能性が大だ。
特に野田は、昨日渚を神社に呼び出した。
妖の駒にされただけだとしても、とにかく話を聞くしかない。
「制服を……」
今度こそ立ち上がろうとする俺を、雅が支えた。
健太郎が、かけてあった制服を差し出す。
「……やはり、行くのかい」
ばあちゃんが、悲しそうな、寂しそうな声を出した。
俺がうなずくと、ため息が返ってくる。
「せめて、武器があれば……」
そんなつぶやきを聞こえないふりをして、
包帯だけの上半身に、制服のシャツを着た、その時……。
ピンポン。
間抜けな、古い呼鈴が鳴った。
「誰だい、こんな時に……」
ばあちゃんがブツブツ言いながら、玄関に出ていく。
しかし訪問者は、きちんとその来訪を予告していた人だった。