右手に剣を、左手に君を
「皆の魂を返せ!!」
俺は左手に、霊力を集中させる。
「……何だと?」
草薙剣を砕いた迦楼羅が、目を見開く。
しかし、この身体から現れたのは、草薙剣じゃない。
リカさんに借りた、神の剣。
倶利伽羅剣だ。
「草薙剣?いえ、違う……」
鍔(ツバ)に巻きついた、龍の飾り。
草薙剣より長い刀身。
それが、今までになかった光を放つ。
曇り空が一気に、明るくなるようだった。
「俺もいるぜ!」
健太郎も、布都御魂を取り出す。
リカさんの力を分け与えられた健太郎の、
今までとはケタが違う霊力にも、二人は目を見張った。
「一晩で何があったって言うの?」
「……悪いが、今は戦っている暇はない」
冷静な迦楼羅の声が響くと。
彼は天に向かって、片手を突き上げた。
「空亡様!」
低い声が、空に響き……。
それに答えるように。
突然頭上に、大きなブラックホールが現れた。
夢で見た、黒い渦と同じ――。
それを見た途端、
背筋が凍りつくのを感じた。
「空亡……」