右手に剣を、左手に君を


「皆の魂を返せ!!」



俺は左手に、霊力を集中させる。



「……何だと?」



草薙剣を砕いた迦楼羅が、目を見開く。


しかし、この身体から現れたのは、草薙剣じゃない。


リカさんに借りた、神の剣。


倶利伽羅剣だ。



「草薙剣?いえ、違う……」



鍔(ツバ)に巻きついた、龍の飾り。


草薙剣より長い刀身。


それが、今までになかった光を放つ。


曇り空が一気に、明るくなるようだった。



「俺もいるぜ!」



健太郎も、布都御魂を取り出す。


リカさんの力を分け与えられた健太郎の、

今までとはケタが違う霊力にも、二人は目を見張った。



「一晩で何があったって言うの?」


「……悪いが、今は戦っている暇はない」



冷静な迦楼羅の声が響くと。


彼は天に向かって、片手を突き上げた。



「空亡様!」



低い声が、空に響き……。


それに答えるように。


突然頭上に、大きなブラックホールが現れた。


夢で見た、黒い渦と同じ――。


それを見た途端、


背筋が凍りつくのを感じた。



「空亡……」




< 245 / 449 >

この作品をシェア

pagetop