右手に剣を、左手に君を


黒い渦は、あっという間に辺りを闇に変えてしまう。


夢と違うのは、赤い目が現れてない事だった。


その渦から、空を震わせる声が響いた。



《迦楼羅……玉藻……戻って参れ……》


「!!」


「う、ぁ……!!」



健太郎が、耳を押さえた。


前に廃虚で聞いた声よりも。


もっとずっと現実感を帯びたそれは。


全ての命あるものから、希望を奪っていく。


絶望と呼ぶにふさわしい、声だった。



渦は、あっという間に魂と二人の妖を飲み込んでいく。



「待て……!!」



それだけの魂を渡してしまったら、


空亡は今度こそ、完全に復活してしまう。



「雷(イカズチ)っ!!」


「うおおおぉぉっ!!」



俺は雷を、健太郎は炎を、


今放出できる全ての霊力を、渦の中心に放つ!!


ゴォォッ!!


それらは闇を燃やし、明るく照らすが……。



《虫けらめ……》



絶望の声が響いた。


それだけで、雷も炎も、渦にゴクリと飲み込まれてしまう。


そして渦は、だんだん小さくなり……。


空の果てに、消えてしまった。



「マジかよ……!」


「くっ、そ……!」


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