右手に剣を、左手に君を


「どういう事だ」



さらに尋ねると、野田はせきを切ったように話しだした。



「僕が、あの妖怪を解放してやったんだ」



信じられないセリフに、俺達は言葉を失う。


野田が、空亡の封印を……?



「どこで?」


「町外れの、山の中だよ。
小学校の裏の」


「あんな近くに……?」



その山は、神社から徒歩40分くらいのところにある。


そんな近くに、空亡は封印されていたのか。



「なるほど……だから忠信は、渚が力尽きる前にあの洞窟に着く事ができたんだ」



雅の言葉に、うなずく。


そうだ。消えかけた渚を急いで運んだとしたら、そう遠くであるはずがない。



「ところで、どうやって解放したんだ。

お前、素人だろ?」



健太郎が尋ねる。


すると、野田はビクリと身体を震わせた。


しかし、すぐ……。


観念したように、口を開いた。



「わざとじゃない。
偶然だった。

僕は、偶然……」


「偶然?」


「あの山で、黒魔術の真似事をしてたんだ」


「はぁぁ!?」



健太郎が、身を乗り出す。


俺と雅はぽかんと口を開けてしまった。


黒魔術って……。


密教系の俺達の、全く専門外だ。


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