右手に剣を、左手に君を


野田は、勝手に話を続ける。



「たまたまあそこにいた、ウサギを捕まえて……。

悪魔に血を捧げ、祈った」


「…………」


「首を切りつけたら、意外に血が飛んだ。


その血が、小さな岩にかかったんだ。


よく見たら、細いしめ縄がしてあった」

「それが……空亡の封印だったのか」



野田に対する、嫌悪感と吐き気を我慢する。


それはあとの二人も一緒だった。


多分野田は、素人のめちゃくちゃな術で、


本当に偶然に、空亡の封印を解放してしまったんだろう。



「あんな超ド級の妖を解放して、よく無事でいたな」



健太郎がつぶやく。


野田はそれに反応し、また不気味な笑いを浮かべた。



「妖怪の方が、人間より親切だった。

あ、あの人は、封印の解放をした僕の願いを、叶えてくれると言った」


「願い?」



そう言えば、そもそも黒魔術なんかやろうと思ったのには、理由があるはずだった。



「空亡に、何を願ったんだ」



俺は、聞く。



「……この世界を滅ぼしてほしいと」


「……!」



何を……言ってるんだ、こいつは。


無意識ににらんでしまうと、野田はまた口の片端を上げて笑う。


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