右手に剣を、左手に君を
「滅んでしまえば良いんだ。
こんな住みにくい、この世界なんか。
バカな人間も、全部!」
「てめぇ……!」
健太郎が、野田の制服の胸元をつかんだ。
いつもならひるむ野田はの声は、何故か勢いを増した。
「僕をいじめた奴等は、全員死ねばいい!!
奴等の友達も、家族も、皆、皆……!
人をバカにしやがって!!
自分の幸せばかり、僕に見せつけやがって!!」
……それは……。
心の叫びだった。
去年野田のクラスであったのは、
本当に軽いいじめだったと聞いていた。
中学の時も、皆に存在を無視されていた。
しかし、どんなに肉体的に傷つけられていなかろうが。
他人が、“軽い”と判断しようが。
野田にとっては、世界中を呪う理由になるくらいの。
辛い、出来事だったんだ。
「お前もそうだ……。
御津恒一、お前も……」
「…………」
「昔は俺と同じ、いじめられっ子だったくせに。
いつの間にか、あんな可愛い女の子がそばにいた。
それを僕に見せつけた!」
「……はぁ?」
そう言えば、渚といるところを、こいつには何回も目撃されている。
買い物先で会った時は、いきなり失礼な質問をされた。