右手に剣を、左手に君を


「……あぁ、あの子だけは助けてくださいって、言うのを忘れた……。

あの子は、もう魂を取られてしまったのか……?」


「渚の事か……?」


「そう、渚さん……。

彼女を初めて見た時は、天使だと思った。

それに、初対面の僕に優しく話しかけてくれた……」



初対面の時。


確か、スマホが珍しかった渚は、無邪気に野田に、話しかけたんだっけ……。



「だけど、あの子のそばには、いつもお前がいた。

それがどんなに、憎らしかったか……」


「……だから、尾野に頼んで、渚を……」


「そうだ!


あの妖怪達は、俺が憎むこの学校の生徒全員の魂を抜くタイミングを見ながら、ここに潜入していた。


だから、ついでに頼んだ。


あの子を、僕にくださいって……。


でも、お前が邪魔した!


あの子がお前に抱かれるのを想像するだけで、気が狂いそうだった。


お前さえ、いなければ……!!」



ちょっと……待てよ。


めちゃくちゃじゃないか……。


いじめの事は、わからなくもない。


だけど、完全に。


渚の事は完全に、ただの独り善がりじゃないか。


俺は不意に、昔の事を思い出した。



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