右手に剣を、左手に君を
今思えば、子供を放置した親に問題があると思える。
だけど子供は野田を、
“厚かましい貧乏人”
と、認識してしまった。
そんな野田は、虚勢をはって、声を張り上げる。
「神社の息子なんだから、魔法が使えるだろ。
やってみろよ」
「できないって、いつも言ってるだろ。
魔法はおとぎ話にしか存在しないんだから。
神社でできるのは、ご祈祷とか、お祓いとか、安産祈願だ」
……俺も、可愛くない子供だった。
野田は言い返す。
「じゃあ“ごきとう”やれよっ」
「バーカっ。
やってやってもいいけど、ご祈祷には祈祷料がいるんだよ。
払えないだろ、貧乏人には!」
売り言葉に買い言葉。
全く意味のないケンカは続く。
このままでは勝てないと悟った野田は、最終兵器を取り出した。
「なんだと……っ!
この、みなしご……っ!!
お前なんか、みーんなに、嫌われてんだからなっっ!!」
みなしご。
……みなしご。
その言葉が、俺の血を沸騰させた。
「……うわぁっ!!」
気づけば、俺は野田に馬乗りになって、
その顔を殴りつけようとしていた。