右手に剣を、左手に君を


「一緒に行って、どうすんだかなぁ……」



家を出てから、雅に話しかけてみた。


渚は健太郎と並び、ポテポテと前を歩いている。


アスファルトに舗装された道路を、珍しそうに眺めながら。


「多分ババ様が既に手を回しているだろう。

一人、転校生が来るだけだ」



そうか。と、うなずく。


ばあちゃんは、この小さな町で、意外に有名だ。


町の主要産業である漁業関係者は、未だに不作や異常気象があると、ばあちゃんに拝んでもらいにくる。


住吉神社は、初詣や七五三になると、結構忙しいのだ。


ま、都会から遠く離れた田舎だから。


他に、行くところがないというのもあるだろうけれど……。


とにかく、ばあちゃんは色んな所に顔がきいた。



「勉強するのが目的じゃない。

俺達に彼女を監視させるのが、ババ様の目的だ。

目を離さないようにしてればいいさ」


「監視……か」


「……言葉が悪かった。
見守り、とでもしておくか」



力を取り戻した途端、海に帰られても困る。


そんなところか。



「……気の毒だな、神ってやつは」



誰に言うでもないつぶやきが、口から出る。


俺は前を歩く渚を、ぼんやりながめた。


その時……。




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