右手に剣を、左手に君を


「だってよ、雅。


コウだって、めちゃくちゃしんどい思いをしてる。


でも、それに立ち向かってるじゃないか。


野田、知ってたか?


最近、コウがクラスでハブにされてた事を」


「え……?」


「知らなかっただろ。

コウは、毅然としてたからだ。


ずっと、昔から。


家では泣いてたかも知れねーけど、外ではいつも、毅然としてた。


自分の境遇に甘えて、人に迷惑をかけたりしなかった。


いじめられても、じっと耐えてた。


だから俺は、コウと友達になったんだよ。


そんなコウを、幼心に尊敬したから」


「健太郎……」



毅然となんか、してない。


ただ、惨めな自分を、他人に見られたくなかっただけで……。


健太郎は無視して続ける。



「貧乏だろーが不細工だろーが、産まれ持ったもんは、しょーがねーだろ。


自分でプラスにしていくしかねーんだから。


他人を憎んで、お前に良いことあったか?ないだろ?


お前に必要なのは、渚の同情じゃねーよ。


適切なカウンセリングだ」



健太郎にズケズケ言われた野田は。


もう怒っていなかった。


その代わりに、泣きそうな顔になっていた。


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