右手に剣を、左手に君を
「僕の立場になった事もないくせに……」
「野田……」
「僕なんか死ねば良いって、ずっと思ってた。
でも、頭の中で誰かが囁いたんだ。
この世に復讐せずに終わって良いのかって……」
そうして。
野田は、ポロポロと涙を流しはじめた。
「……確かに、世の中は綺麗事ばかりじゃないよな。
人を羨んだり、憎んだりする事は、誰にでもあるよ」
「うるさい……」
「だけどな。
健太郎の言う通りだよ。
他人を憎んで、復讐して、良いことあったか……?」
「黙れっ!」
「だって野田、震えてるじゃないか……」
耳をふさいでいた野田は、ハッと顔を上げた。
「この光景を見て、震えてる。
わかってんだろ?
自分が、とんでもない事をしたって」
「…………」
「怖いんだろ……?
この世界が、終わっていく事が。
誰にも愛されずに、自分も終わっていく事が」
野田の顔が、涙で崩壊していく。
わかるよ。
俺だって、あのまま孤独だったら、
親を恨んで、この世界を憎んだだろう。
でも本当は。
寂しかっただけなんだ。
誰かに。
必要とされたかったんだよな。