右手に剣を、左手に君を



「さっき言った場所に、間違いはないよな?

玉藻や迦楼羅も、そこにいるんだよな?」


「……いる……多分……。

人の目には見えない城を作ったって、言ってた……」



素直に言った野田に、うなずいてやった。



「ありがとう……行ってくるよ」



そして、野田をそこに置いたまま、背を向けると。


大きな泣き声が、響きはじめた。



「野田……」



自分のやった事を、後悔して。


絶叫に近い泣き声になった彼の方を、思わず振り返った。


その時……。



ごとん。



突然、野田が、電源が切れたオモチャのように、床に転がった。



「野田!」

「やられたか……!」



やはり空亡は、野田の願いを叶える気なんかなかったんだ。


たまたま、目的が同じだっただけ。


野田の口から出た魂が、ふわりと頭上に浮いた。


それは、小学校の裏の山の方角に向かって、宙を泳いでいく。



「行こう!」



俺達は、必死にその魂の後を追った。


野田の、孤独な魂のあとを。



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