右手に剣を、左手に君を
ほんとはね


走り続けて、小学校の裏の山まで来た。


懐かしい、なんて思う余裕もなかった。


空はどんよりと曇り、昼間なのに夜のように暗い。


ここに来るまでに会った町の大人達も皆、調子が悪そうにしていた。


しかし、まだパニックにはなっていなかった。


魂を抜かれたのは、あの学校の生徒だけだと思われる。


早く、早くしなければ。


乱れる息。


喉はもう、血が出そうなくらいヒリヒリする。


それでも、俺達は走り続けた。


野田の魂が導く場所へ。


獣と妖しか通らない、奥のそのまた奥へ。


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