右手に剣を、左手に君を
魂に導かれるまま、山の中を通っていくと。
木の生い茂る中に、信じられないものが現れた。
「なんだ、これは……!」
それは、歴史の教科書で見たような、日本独特の城だった。
しかし、お世辞にも綺麗とは言えない。
そびえる城壁も、天守閣も、一本の巨木の幹を荒削りしただけのような風貌だった。
禍々しい妖気がはびこり、黒く見える、城……。
「これ、妖が作ったのか?」
健太郎かごくりとツバを飲み込む。
「野田がそう言ってたな。
常人には見えないんだ。
しかしよく、神からも俺達のような人間にも見つからないように、今まで隠していたな」
雅は変なところで関心した。
「あ……っ」
俺の声に、二人とも上を見上げた。
ここまで追ってきた野田の魂が、
城の最上までふわりふわりと浮かんでいったんだ。
やがて魂は、忽然と消えた。
「上か……!」
城の中へ乗り込もうとする俺を、雅が止めた。
「恒一、お前はまず渚を探せ。
この城のどこかにいるはずだ」
「雅……」
「そうそう。
それまで俺らが何とかするからさ」
「健太郎……」
二人の友人は、俺に向かって笑いかけた。