右手に剣を、左手に君を


「げっ!」



門番を務めていた妖を倒し、扉を蹴破り、中に入ると。


そこかしこに、大量の妖がいた。


牛の頭をしたもの、ガイコツ形のもの……。


種類もごちゃごちゃだ。


城の中は、案外広かった。


中と外の空間は、別物なのかもしれない。



「燃えろっ!!」



健太郎の剣が赤く光り、炎で斬りつけてくる妖を燃やす。



「邪魔だ!!」



雅の剣は翡翠色に輝き、

振り上げる度にかまいたちが起こり、妖の胴を切断していった。


二人とも、リカさんの力を分けられたおかげで、

本当にパワーアップしているようだ。


俺は倒れた一体の妖を捕まえて、尋ねた。



「龍神の姫はどこだ!」



しかし妖は、獣のようにグルルと喉を鳴らすだけ。



「ちっ……」



ここには、人の言葉が通じる高度な妖はいなさそうだ。


俺は必死で、感覚を研ぎ澄ませた。


渚、どこにいる。


上か?下か?


もしかして、空亡と一緒にいるのか?


まだ、生きてるよな?


頼む、応えてくれ……!!



心の中で、そう念じると。


右手でにぎっていた倶利伽羅剣が、


鈍い熱を発しているのに気付いた。


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