右手に剣を、左手に君を
気がつけば、私はボロボロと泣いていた。
もうぬぐってもらえない涙が、後から後から、落ちた。
……ここから、出ないと……。
龍神剣を空亡に渡したら、本当に人間は滅びてしまう。
コウくんも、雅も健ちゃんも。
足手まといのまま、迷惑ばかりかけるなんて。
そんなの、嫌だ。
涙をふいて、目の前の格子を見つめた。
その時。
頭の上で、物音がしはじめた。
たくさんの足音の中に、妖達の叫び声がする。
いったい、何事?
ぽかんと天井を見上げていたら。
突然、耳鳴りがした。
「なに……?」
違う、耳鳴りじゃない。
これは、剣の声……。
私を呼ぶ、リカお姉さまの倶利伽羅剣の声……!
助けに来てくれたんだ!
「お姉さま!
私はここだよ!」
突然声を張り上げた私を、牢獄の外から、見張りの妖がにらんだ。
ギクッとして、後ずさると。
バリバリバリッ!!
すさまじい音と共に、妖は黒焦げになって倒れた。
これは、草薙剣と似てるけど、もっと強力な。
倶利伽羅剣の雷(イカズチ)……!
「お姉さ……」
お姉さまが、来てくれた。
そう思って、格子に飛びついた私の視界に入ったのは。
お姉さまじゃ、なかった。
私がいつも、心に思い描いてしまう人……。
コウくんだった。
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