右手に剣を、左手に君を


階段を降りていくと。


ほこりっぽい地下空間に、すぐ牢獄のようなものが見えた。


剣の光が、いくつも並ぶそれの最奥をさす。


そちらへ、走っていくと。


妖が一体、見えた。


多分、見張りだ。



「雷(イカズチ)っっ!!」



いつもと同じように霊力を送り、放ったそれは……。


草薙剣よりも何倍も強力な雷を、妖に浴びせかけた!


声を出す間もなく倒れた妖の方に、駆け寄っていく。


そこで。



「お姉さ……」



小さな声がして、白い指が格子から、見えた。



「渚……!!」



いた……!!


生きてた……!!



渚はキョトンとした顔で、茶色いままの大きな目を、ますます大きくさせた。



あぁ……。


良かった。


どこも、傷つけられてない。


安心感がどっと押し寄せる。



「渚……」



名前を呼んで、格子の間から腕を突っ込んだ。


すると、渚も同じように……。


白くて細い両腕をのばして。


何とか、俺にしがみつこうとした。



「コウくん……!!」



その顔は、たちまち涙に濡れていく。



「大丈夫か?何もされなかったか?」


尋ねると、渚はこくこくとうなずいた。


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