右手に剣を、左手に君を


「ふぇ……っ。

苦しいよぉ、コウくん……」


「あ……ごめん」



少しだけ、力を抜く。


すると渚が、俺の胸からぷはっと顔を上げた。


俺はそれを見て。


少しだけ、笑ってしまった。



「な、なによぅ」


「だって、龍神のくせに……息続かないのかよ……」


「う……。だって今は、人の姿だもん」



感動の再会が、台無しだ。


何でこう、俺達はマヌケなんだろう。



「あ……そうだ、渚。
忠信の事だけど」



その名前を出すと、渚は真剣な顔に戻った。



「信じてもらえないかもしれないけど、あいつは……」


「それは、もう良いってば」


「渚……」



そうはいかない。


拒否されても、伝えなければ。


忠信は、君を愛していたって。


しかし、次の瞬間。


俺の口は、ふさがれてしまった。


渚の、小さな唇で……。


< 274 / 449 >

この作品をシェア

pagetop