右手に剣を、左手に君を
「ふぇ……っ。
苦しいよぉ、コウくん……」
「あ……ごめん」
少しだけ、力を抜く。
すると渚が、俺の胸からぷはっと顔を上げた。
俺はそれを見て。
少しだけ、笑ってしまった。
「な、なによぅ」
「だって、龍神のくせに……息続かないのかよ……」
「う……。だって今は、人の姿だもん」
感動の再会が、台無しだ。
何でこう、俺達はマヌケなんだろう。
「あ……そうだ、渚。
忠信の事だけど」
その名前を出すと、渚は真剣な顔に戻った。
「信じてもらえないかもしれないけど、あいつは……」
「それは、もう良いってば」
「渚……」
そうはいかない。
拒否されても、伝えなければ。
忠信は、君を愛していたって。
しかし、次の瞬間。
俺の口は、ふさがれてしまった。
渚の、小さな唇で……。