右手に剣を、左手に君を
何が起きたかわからなかった俺に。
口を離した渚は、ぎゅうと抱きついた。
そして。
俺を見上げて言った。
「忠信様より、コウくんに会いたかった……」
「な……」
「コウくんが好きなの。
多分、出会った時から。
本当だよ?
本当はね、あの時、コウくんの気持ち、嬉しかったの。
だけど……私が、臆病で……傷つけて……」
「傷つけたなんて……」
「それでも、私のために、剣を捨ててくれた。
助けに来てくれた」
合わせた小さな胸に似合わない、
大きな鼓動が伝わってくる。
いや、それはもう。
俺の鼓動の音なのかも、しれなかった。
「ありがとう……
大好きだよ、コウくん」
真っ直ぐに俺を見上げた瞳に、嘘はなかった。
「先に、言うなよ……」
俺は、彼女を抱きしめて。
一度だけ、キスをした。
最愛の情をこめて。