右手に剣を、左手に君を


階段を昇っていくと、もうそこには生きている妖も、雅達の姿もなかった。


もっと上の階から、物音が聞こえる。


俺は簡単に事情を説明しながら、渚と上に上がっていった。


そして、最上階に近いだろうと思われたそこで……。


味方の姿を発見した。



「あー!!

コウ!渚!

マジかよーっ!やったーっ!」



相変わらず妖を斬りながら、健太郎が叫んだ。


しっかり繋がれた、俺達の手を見たのだろう。


突然気恥ずかしくなったのか、渚の方からその手を離す。



「恥ずかしがる事はない。

渚、今日は一段と素敵だね」



少し荒い息をしながらも、雅はイタズラな顔で笑った。


見ると、健太郎も汗だくだ。


ここにたどり着くまでに、相当の妖を倒したのだろう。


二人とも、制服のところどころが汚れたり破れたりしている。



「悪かったな。大丈夫か?」


「あぁ、見ての通りだ。そちらは?」


「大丈夫。渚の力も戻った」



その階の最後の妖を倒し、健太郎がニヤニヤとした顔で近づく。



「完全に、愛の力だなっ!

なんだ、ホレ、キスくらいはしたんだろっ?」



なんだか、親戚のオッサンみたいな健太郎の言い方に、渚が吹き出した。


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