右手に剣を、左手に君を
「もう少しだったのに……。
今、あなた達の相手をしている暇はないのよ」
「玉藻、良いだろう。
空亡様の復活を見せてやろうではないか」
迦楼羅がそう言うと、浮いていた無数の魂が、突然流れはじめた。
まるで、風に吹かれた花の種のように。
「待て……!!」
この先に、空亡がいるに違いない。
追いかけようとした俺達の前に。
「行かせないわ」
玉藻と、迦楼羅が立ちはだかった。
「くそ……っ」
「龍神の姫を連れてきてくれて、ありがとう。
手間が省けたわ」
「姫……今こそ、龍神剣を産んでもらおう。
復活した空亡様への贈り物にするのだ」
迦楼羅の手が伸びる。
すると、その手を。
鋭い風が、傷つけた。
「……お前の相手は、俺だ」
不意に傷つけられた迦楼羅は、その犯人をにらみつけた。
そんな鋭い風を放てるのは、もちろん。
雅だ。
「行け!恒一!渚!」
雅は十束剣で、迦楼羅に斬りかかる。
もう、一刻の猶予もない。
渚の手を引いて走り出す俺の後ろから。
「行かせないって言ってるでしょ!!」
そんな声が飛んできた。