右手に剣を、左手に君を
魂が流れていく方へ、走って、走って。
雅や健太郎の戦いの音が、ほとんど聞こえなくなった時。
魂達が、またふわふわと浮かびはじめた。
「……来る……!」
渚が、小さな声で言った。
俺はその身体を抱き寄せる。
目の前に展開しだした、
すさまじい妖気の渦を感じながら……。
黒く、禍々しい、妖気。
それが渦になって、少しずつ姿を現した。
暗闇より暗い、その渦は。
俺達の頭上で、ぐるぐるとうごめく……。
他の妖のように、実体がない。
それゆえに、どの文献でも、【正体・姿不明】と書かれる、魑魅魍魎の王。
空亡(ソラナキ)……。