右手に剣を、左手に君を


魂が流れていく方へ、走って、走って。



雅や健太郎の戦いの音が、ほとんど聞こえなくなった時。


魂達が、またふわふわと浮かびはじめた。



「……来る……!」



渚が、小さな声で言った。


俺はその身体を抱き寄せる。


目の前に展開しだした、


すさまじい妖気の渦を感じながら……。



黒く、禍々しい、妖気。


それが渦になって、少しずつ姿を現した。


暗闇より暗い、その渦は。


俺達の頭上で、ぐるぐるとうごめく……。


他の妖のように、実体がない。


それゆえに、どの文献でも、【正体・姿不明】と書かれる、魑魅魍魎の王。


空亡(ソラナキ)……。



< 287 / 449 >

この作品をシェア

pagetop