右手に剣を、左手に君を


一瞬硬直してしまったが、すぐに気をとりなおす。


渚を背にまわし、倶利伽羅剣を掲げた。



「雷(イカズチ)っっ!!」



パァン、と雷が一本、渦に落ちる。


渦は少しだけ揺らめいた。


先ほど、健太郎と一緒に攻撃した時は、ダメだった。


普通の攻撃は、効かない。


ただ、渚からさっき、キスをされた。


神の口づけを受けたんだ。


そのぶんだけ、渦を揺らめかせる事はできたが……。


まだ、足りない。



「どうすればいい……?」



思案していると、突然、渦の中心から声がした。



《そんなもので、私を傷つけられると思うてか……

この、うつけが……》



人の希望を、全て絶望に変える声。


その冷たさに、背筋が凍ってしまいそうになる。


俺と渚はまた、手をにぎりあった。



《私の完全復活を……邪魔できるものなら、してみるがいい》



そう、声がしたかと思うと。



「!!」



突然渦の中から、黒い塊が蛇のように、こちらに首をのばす!


その先には、鬼のような顔があった。



「避けて!!」



剣でそれを受けようとした俺に、渚が叫ぶ。


言われた通り、彼女を抱いて飛び退いた。


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