右手に剣を、左手に君を
渦……空亡が、ゆらりと揺らめいた気がした。
首の攻撃が、一旦止んで静かになる。
すると渦の中心から、地獄の底から響くような声がした。
《……龍神の姫に、三剣士……。
また、私の邪魔をするのか……》
どうやら、渚の言う事は図星だったようだ。
太陽が、空亡の弱点……。
《しかし貴様らに、あの雲を払う事はできまい》
そう言われ、渚は唇を噛んだ。
「何とかならないか?」
「……私は龍神だから、雨を降らせる事はできても、
太陽を呼ぶ事はできない……」
「そうか……じゃあ、どうすれば……」
渚は再び、何もない上空をにらんだ。
「とにかく、この巨大な結界を、崩さなきゃ。
それから、雅が十束剣で風を起こせば……」
そこまで言いかけたところで、地面が、振動した。
いや、違う。
地鳴りのように聞こえたのは。
空亡の、笑い声だった。
《途方もない事を……。
迦楼羅と戦って、そんな力があの人間に残ると思うか?》
「……!」
《もう一人も同じだ。
役立たずな三剣士と、龍神の姫よ……》
言い返すより先に、周りで浮かんでいた魂達が、また流れはじめた。