右手に剣を、左手に君を
迦楼羅と玉藻は、力をふりしぼり、立ち上がり。
空亡の方へと、移動しはじめた。
「渚、とにかくこの結界を壊そう!」
「はいっっ」
雅と健太郎を庇うように、俺達は彼らの前に立つ。
そして、俺は右手で、倶利伽羅剣を天に掲げた。
左腕で、渚を抱き寄せて。
渚は、そのまま霊力を高め、研ぎ澄ませていく。
これだけ大きな結界を壊そうとしているんだ。
無理もなく、渚の額には汗が玉になって浮かびはじめた。
早く……。
俺も、彼女に力を送る。
さっき、扉を開けたのと同じ要領で、
二人の霊力が空間を中和しようとしていた。
しかし……。
《龍神の姫……》
思いがけない近くから、空亡の声がして集中が途切れてしまう。
「……あれが」
「空亡……!!」
雅と健太郎が、青ざめた顔で上を見上げる。
そこには、いつの間にか……いや、たった一瞬で近づいてきた空亡がいた。
《龍神の姫……今こそ、龍神剣を渡してもらおう!》
警戒する暇もなかった。
空亡の渦から、一本の黒い触手が現れ。
目にもとまらないほどの速さで、渚の身体に巻きついた。