右手に剣を、左手に君を


返事がない。


慌てて駆け寄ると、二人とも意識がなかった。


光を失った神剣が、力なく地面に転がっている。



《龍神の姫……。

良いのか?三剣士を殺しても……》


「ダメ……っ!」


《ならば、渡せ。

龍神剣を……》



そう言われて、心優しい彼女の瞳が揺らめいた。



「ダメだ!!

剣を渡しても、どのみち全員殺される!!」



渚に向かって叫ぶ。


すると、渦の中から触手がもう一本、俺をめがけて伸びてきた。



「くっ!!」



跳んで避けようとするが。


傷ついた足は思い通りに動かず、バランスを崩す。


その瞬間、触手が腰にぐるりと巻きついた。


両腕が一緒に封じられる。



「離せ……っ!

ぐ、ぎ、があぁぁ……っ!!」


「コウくん!!」



触手に縛りあげられ、身体中の骨がきしむ。


内臓が押し潰されそうな苦しさに、生理的な涙がにじんだ。



「やめてっ!!やめてよっっ!!」


《どうする?

このままこいつを殺してやろうか?》


「ダメだったら!!」



その時……。


渚の胸の辺りが、青白く光った。


あれは……!


龍神剣の光……!


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