右手に剣を、左手に君を
《善女っ!!》
黒いガラスの欠片が、バラバラと降り注ぐ。
いや、ガラスではない。
これは、結界……。
そして、渚の本名を呼んだのは。
龍神の姿の、リカさんだった。
黄金に光る龍が、壊れた結界から侵入する。
《ぐ……っ!》
そのまぶしい光にうろたえた空亡が、思わず触手をゆるめさせた。
「きゃあああっ!!」
「!!」
触手に離され、地上へ落ちていく俺達を……。
黄金の龍の頭が、すくった。
「お姉さま!!」
《一旦退くのです、善女!!》
赤い目を渦の中に隠してしまった空亡の後から、玉藻と迦楼羅が飛び出してきた。
「待ちなさい!!」
《待つものか》
「人間の魂がどうなっても良いのか?」
《構わぬ!》
龍の姿のリカさんはそう言い捨てると、二人に向かって炎の息を吐き出す!!
《お、のれ……っ!
倶利伽羅竜王か……っ!!》
敵が怯んだすきに地上に降ろされた俺は、もう動けなかった。
それに寄り添う渚に、リカさんが言う。
《一旦住吉神社に帰りなさい。
私は、海に帰らねばなりません》
「お姉さま……っ!」