右手に剣を、左手に君を


《まだ神々の意見がまとまらないのです。

勝手に飛び出した私を、海神様が待っているから》


「……っ!」



渚はびくりと肩を震わせた。


倶利伽羅竜王は、神々の反対を押しきって、勝手に一人で助けにきてしまったんだ。


自分のように、海から追放されたらどうしよう……。


そんな事が、顔に書いてあった。



《良いから、早くしなさい。

私と、同じように……》



そう言うと、巨大な龍神の頭が渚に息を吹きかける。


すると……!


渚のスカートのすそから、にょき、と大きな尻尾が生えた。


いや、元々あった、龍神の名残だ。


魚の尾びれみたいだったそれは、青く光り……。


みるみるうちに巨大化し、


鋭い爪を持つ腕が二本、生えた。


全身はうろこで覆われていく。


やがて鋭い牙を持った巨大な口の上から、長いヒゲが生えた。



《うわぁ、この姿久しぶり~。
さすがお姉さま!》



のんびりとした口調ではあるが……。


そこに現れたのは。


立派な、青い龍神だった。



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