右手に剣を、左手に君を
《早くするのです!》
リカさんは、ぽいぽいと、俺達を口でつまんで渚の頭に放った。
《待て……!》
空亡の声がする。
空が晴れたわけじゃない。
リカさんの眩しさに慣れてきた空亡は、
再びその目を開けようとしていた。
《飛べ!!》
リカさんが、叫ぶ。
すると、龍になった渚の身体が、ぶわりと曇り空に舞った。
《あわ、あわ、あわわわ……》
千何年ぶりに龍神の姿になった渚は、バランスをとるのに苦労し……。
俺は死にかけながら、仲間の身体を落とさないように必死になった。
《龍神の姫……!》
下から、空亡の声がする。
《覚えておくがいい。
この身にとりこんだ魂が存在できるのは、せいぜい三日。
それを過ぎたら、この町は屍(シカバネ)で溢れかえるだろう。
龍神剣を渡せば、人間の命だけは助けてやってもいい。
私達の奴隷として、生かしてやろう。
それとも、本当にこの星から姿を消すか。
よく考えるのだ、龍神の姫よ……!》
渚は、その声を聞かないようにして。
曇り空を、神社の方へとすべりだした。
俺達の、家へと……。