右手に剣を、左手に君を


リカさんは海へ向かい、途中で別れた。


渚は名残惜しそうだったが、



《すぐに会えるわ》



というリカさんの言葉を信じて。


大人しく、神社へと向かった。



《見えてきたよ……!》



ほとんど意識を失った耳に、そんな声が聞こえたかと思うと。


渚はゆっくりと、高度を下げはじめた。


どうやら、だいぶ慣れたらしい。


そして、神社に着くと。


俺達三人を、優しく降ろした。



《んと……人間の姿に、戻れるかなぁ……》



渚は、龍の姿のまま、もじもじと身体をよじらせる。


もう見ている力しかなかった俺は、目だけをそちらに向けていた。


やがて渚の身体が光だし……。


龍は小さく、収縮しはじめた。


光の中で、白い手足と長い髪が現れたのが、ぼんやり見える。


良かったな……。


なんて、思っていたら。



「うわあぁぁっ!!」



地上から神社に続く階段の方から、悲鳴がした。



「!?」



渚が、そちらを振り返る。


まだ、大きな龍神の尾をばたつかせたままで……。


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