右手に剣を、左手に君を
その声の主は、普通の人間だった。
中年の夫婦に見える彼らは、渚の姿を見て、ブルブルと震えた。
「バカっ、早く、尻尾を、隠せ……っ!」
「わかってる!」
渚はすぐに、大きな尻尾を、元々の魚の尾びれサイズまで戻した。
しかし、夫婦はあわあわと言いながら、神社から逃げていく。
「あわわ~」
後を追おうか一瞬考えた渚は、それを断念してこちらへ向かってきた。
とにかく、三人重傷者がいるこちらへの対処が先だと思ったんだろう。
そして、龍神の姿から戻った渚は……何故か、裸だったのだ。
しかし、もちろんそんな事を気にする余裕はなかった。
この選択が……。
間違っていた事が、この後すぐにわかる。