右手に剣を、左手に君を


とにかく、傷を癒さなければ。


渚とばあちゃんに言われて、もう一眠りした俺は、昼に目が覚めた。


自分の部屋だ。


出かける前と、何も変わらない……。


窓の外では、バタバタと強い雨音がする。


それ以外は、本当に静かで……。


空亡が完全復活してしまった事なんて、

夢のように思えた。



「……おいおい……」



何とか起き上がって、横に視線を移すと。


渚が俺の隣で、すやすや寝ていた。


いつの間に……。


その安らかな寝顔を、見ていると。


こっちまで、心が落ち着いて……。


こない。



「アホ……」



ヘタに、想いが通じてしまったせいか。


今までの癒し系ヘタレが、急に女に見える。


……触っても、いいかな……。


一応俺も、10代男子なわけだ。


目の前に好きな女の子がいる。


ならば、触りたくなるのは自然な事……。


俺の手は吸い寄せられるように、彼女の頬に触れた。


鼻をつまむと、口から「んが」と、間抜けな声が出た。


笑いをこらえる。


それでも渚はまだ、起きない。


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