右手に剣を、左手に君を
こんなことしてる場合じゃないよな……。
だけど、こんな時間が一秒でも長く続いてほしいと思うのは。
俺の、わがままかな……。
手は、その柔らかな髪をなで……。
唇が、無意識に彼女に口づけた。
「!」
俺の下で、渚の身体が跳ねた。
さすがに、気づいたか。
顔を離すと、渚が目を開けて、こちらを見ていた。
真っ赤な頬で……。
「い、今……」
「なに?」
「した……?」
「何を?」
意地悪く言うと、渚は「ぶぅぅ」と頬を膨らませた。
「キスしたけど。悪い?」
「な、なにそれ……。
コウくん、キャラ違う」
「キャラってお前、どこで覚えたんだよ」
吹き出してしまうと、渚もつられたのか、ニヘラと笑った。
「俺、意外とSかも」
ちょっと、いじめるのが楽しい気がする。
もちろん、他の人間にはあまり思わないけど。
「えす?」
「あー……。
覚えなくて、良いよ」
とにかく、この体勢はヤバイ。
完全に、押し倒した感じになってしまっている。
身体を起こそうとすると、何かが首に巻きついた。
それは、渚の細い腕だった。