右手に剣を、左手に君を


「夢じゃないよね……?」



小さな声が、鼓膜を震わせる。



「何が……?」


「コウくん、私のこと……」


「……好きだよ」


「……ふわあぁ……」



囁くと、渚は龍神のくせに、ゆでダコみたいになった。


そして、自分の手で顔を隠す。



「なんだよ」


「う、嬉しい……」


……最初は全く、信じなかったくせに。


でも。


嬉しい。


そう言って、恥じらう渚を。


何より、愛しく思った。



「……顔、見せろ」



手をどけると、何とも微妙な表情が、そこにあった。


笑いそうな、涙をこらえているような……。



「嫌われたかと、思ったの……」


「えっ?」


「本当の姿、見られちゃったから……」



本当の姿。


青い、巨大な龍の姿。



「あぁ……。でかくて長かったな」


「そ、それだけ?」


「龍なんて初めて見たから、驚いた。

……それくらい……かな?」


「ひかないの?」


「ひかないよ。

てか、お前ちょいちょい、変な現代語出てくるな……」



よしよし、と頭をなでると。


渚は笑った。


泣きそうな顔で……。


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