右手に剣を、左手に君を
「雅くーん!お昼一緒に食べよう♪」
「何言ってるのよ、今日は私と食べるの!」
どこからわいたのか、雅ファンの女達に行く手を阻まれる。
「あぁわかった、皆で食べよう」
クールなわりに紳士な雅は、俺に一言すまないと言い、女達に囲まれて行ってしまった。
顔も良くて優しいから、モテるんだよな。
「何だよあれ。バーカバーカ」
健太郎が負け惜しみを言う。
そんな彼も、すぐに声をかけられた。
「健太郎!」
「お?」
「今からサッカーやるから、加勢してくれよ。
勝ったらミルクパンやるから!」
男子生徒はそう言うと、購買で人気の『ミルクパン』を健太郎の目の前にぷらぷらさせた。
ふわふわの生地に、ミルククリームが挟まれただけの、素朴なパン。
しかしこれが何故か、ウマい。
競争率が激しく、滅多に食べられないパンだ。
「おぉ、ミルクパン……」
健太郎の目が、光り輝く。
「……コウ……俺……」
「……行きたいんだろ?
勝手に行けよ……」
「すまねぇ!愛してるぜ、コウ!」
健太郎はキモいセリフと共に、風のように走り去ってしまった……。
雅と健太郎は、小さな時から一緒に遊んでいた。
もともと御津・柏原・西条の三家の結びつきは強く、親戚同様の付き合いをしている。