右手に剣を、左手に君を
「どなたですか?」
ばあちゃんが声をかける。
すると、外から声がした。
「町長の玉井です」
「まぁ」
なんだ、町長か。
町長は、ばあちゃんと仲がいい。
少しほっとして、ばあちゃんが戸を開けた。
すると……。
「御津さん……」
「玉井さん!?」
太ったおじいちゃん町長は、突然玄関に倒れこんだ。
よく見ると、そこらじゅうに打ち身の跡がある。
素朴な服も、転げた後のように汚れていた。
「いったいどうしたんですか!?」
ばあちゃんが、慌てて町長に手を貸す。
町長は、涙目でばあちゃんに訴えた。
「町の人たちに、襲われて……」
「えっ」
なんで?なんで、町長が?
「昨日からのパニックで、皆、おかしいんです……」
「何があったか、詳しく説明してください」
「町の人たちが、この異常事態の原因は、住吉神社だと言うんです。
昨夜、バケモノをここで見たという夫婦がいて……。
その噂があっという間に広がり、
御津さんと仲良くしていた私もグルだろうと、いきなり殴られました」
「な……っ!」