右手に剣を、左手に君を


「どなたですか?」



ばあちゃんが声をかける。


すると、外から声がした。



「町長の玉井です」

「まぁ」



なんだ、町長か。


町長は、ばあちゃんと仲がいい。


少しほっとして、ばあちゃんが戸を開けた。


すると……。



「御津さん……」

「玉井さん!?」



太ったおじいちゃん町長は、突然玄関に倒れこんだ。


よく見ると、そこらじゅうに打ち身の跡がある。


素朴な服も、転げた後のように汚れていた。



「いったいどうしたんですか!?」



ばあちゃんが、慌てて町長に手を貸す。


町長は、涙目でばあちゃんに訴えた。



「町の人たちに、襲われて……」

「えっ」



なんで?なんで、町長が?



「昨日からのパニックで、皆、おかしいんです……」


「何があったか、詳しく説明してください」


「町の人たちが、この異常事態の原因は、住吉神社だと言うんです。


昨夜、バケモノをここで見たという夫婦がいて……。


その噂があっという間に広がり、

御津さんと仲良くしていた私もグルだろうと、いきなり殴られました」


「な……っ!」


< 317 / 449 >

この作品をシェア

pagetop