右手に剣を、左手に君を
……それは、さておき。
また渚と二人にされてしまった。
「……雅も健ちゃんも、行っちゃったね……」
「……俺らも早く、屋上に行くぞ」
「オクジョウ?」
「いいから、ついてこい」
うん、とうなずくと。
渚は、また俺の手をとった。
それだけで、田舎の学生は一斉にこちらに注目する。
でも、この手を離すわけにはいかなかった。
こんなところで突き放すのは、あまりに可哀想だ。
しかし……。
「なぁ、渚」
「うん?」
「もう少し……目立たない姿にできなかったのか?」
「ふえ?」
「その……。
お前が可愛いから、皆が見てる」
「ふえ!?」
渚はおかしな声を出した。
そして何故か、赤い顔でぷるぷるしている。
「何だよ……」
「か、可愛いって……コウくんが、可愛いって言った」
「……そう思ったんだよ。悪いか」
「ううん、悪くない……」
えへへ、と渚は照れて笑った。
「この姿はね、龍神の父様がしてくださったの」
「へぇ……」
何か、童話の人魚姫みたいだな。
人の姿になり、人間の世界に来て……。
帰れなくなった、マヌケな人魚姫。
「なんで、尻尾は残ってるんだ?」
「これでも、龍神の端くれだから……
って、何で知ってるの!?」
「は?今更かよ!」
それは朝、なぜパンツを履かされたか考えりゃわかるだろ!!
ポンと頭に浮かぶのは、白い肌と小さな尻尾。
うっ、わぁぁ、だあぁぁぁ、思い出すな、俺!!