右手に剣を、左手に君を
さらに悪い事に、渚は髪や目の色を変えるのを忘れていた。
銀髪をなびかせ、真っ青な目をした渚を見て、
人々は口々に「バケモノだ」と、彼女を罵った。
そして。
「娘を返せ!」
ある一人の男が叫び、渚につかみかかろうとする。
「やめろっ!」
俺はその場から跳び、渚の元へと急いだ。
男の手が彼女に届く寸前、俺は渚を背に回した。
人間たちは、一瞬ひるんで後ずさったが……。
次の瞬間、どこかからか声がした。
「バケモノを殺せ!!」
……その言葉で。
俺の怒りは、一瞬にして沸騰した。
「黙れぇぇぇぇぇっ!!」
霊力を込めたその叫びに、町の大人達は再び黙った。
「コウくん、ダメだよ……」
渚の声が聞こえたが、それを無視した。
「誰がバケモノだ!!
この人は、俺の大事な人だ。
お前たちに、指一本触れさせはしない!!」
呆気に取られていた大人達は、次第に調子を取り戻す。
「やっぱり、お前の仕業だったのか!!」
「バケモノ!子供達を返せ!」