右手に剣を、左手に君を
彼女の決意
「……コウ、くん……っ!」
荒れた海をボートで渡り、何とかたどり着いた洞窟で。
渚は、俺の手を無理矢理離した。
「渚……」
「帰ろう、コウくん。
おばあ様、心配してるよ。
あの人たちだって、話せばわかってくれるはずだよ」
渚の顔は、涙こそ流れていなかったが、ほとんど泣いていた。
「だからお前は、お人好しすぎるんだよ……」
「……そうかも、しれないけど……」
二人の声が、洞窟に反響して響く。
怪我をしたばかりの身体で全力疾走し、
力尽きそうな俺は、その場に腰を降ろした。
「もういいよ。
もう、やめよう。
あんな人間達のために、俺たちが命をかけることはない」
そう言ってしまうと、渚はいっそう悲しそうな顔をした。