右手に剣を、左手に君を


一瞬、何が起こったかわからなかった。


まさか渚に殴られるなんて、思わなかったから。


いや、水かけられたことはあったけど。



「なんだよ……」



かろうじてそう言うと、渚は目に涙をためて言った。



「そんなことして何になるの!?

しっかりしてよ!」


「渚……」


「がんばろうよぉ……。

私の最後の希望を奪わないでよ」


「最後の希望?」



聞き返すと、渚はこくりとうなずいて、言った。



「た、戦いが終わったら……

コウくんのお嫁さんにしてほしいの」



その頬は、みるみる赤く染まっていく。



「その……神でもなく、人間でもない、

中途半端な生き物でいいから。


あなたと、夫婦になりたい……」



それは、つまり。


完全に、男女の関係になるということ……。



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