右手に剣を、左手に君を
「おねえさま」
渚はすぐに身体を離し、立ち上がる。
俺もその隣に立った。
リカさんが何を言いたいかは、多分二人ともわかってる。
ついさっきまで、
俺だって頭に血が昇っていたのだから……。
「海に帰りましょう、善女」
リカさんはそう言うと、渚の手首をつかんだ。
「おねえさま、離して。
私、まだ帰らない」
「何があったかは聞いたわ。
もうあなたが、人間達のために力を貸すことはありません」
当然の怒りだった。
せっかく自分も人間に力を貸してやったのに、
まさか妹がバケモノ扱いされるとは。
人間の愚かさに、嫌気がさして当然だろう。
「違うの。
私がうっかり、見られちゃったから……。
それにあの人たちは、何も知らないんだもの」
渚の人間に対する弁護を聞いても、
リカさんの怒りはおさまらない。