右手に剣を、左手に君を
「では、この人を疑うのはどうなのです。
あなたの愛しい人まで、
あらぬ疑いをかけられているのよ」
そういえば、そうだった。
この町にいれば、俺はきっとずっと、白い目で見られる……。
「だから、人間なんて早く見捨てるべきだったのよ。
この人といたって、明るい未来なんか、ないわ」
リカさんは冷たく言った。
無理して、心を凍らせて……。
妹を、守ろうとしている。
「おねえさま……
それでも、私は……」
「もう黙りなさい。
御津恒一。
貸していた剣を、返してちょうだい」
渚の言葉を遮り、リカさんは俺のほうを見る。
まだ倶利伽羅剣は、この身の内にあった。
これを渡してしまったら、また俺は丸腰になってしまう。
返事ができないでいると、
リカさんは厳しい瞳で、俺をにらんだ。