右手に剣を、左手に君を


「久しぶりだな、善女竜王」


おじさんに声をかけられ、渚は、


「はいっ」



と、小さく答え、

土下座のように深く、頭を下げた。


どうやら、本気でこのおじさんは海神らしい。



「海神様……どうして、こちらへ。

そんな、人間の姿で……」



リカさんがおそるおそるたずねる。



「いや、だって、人間の姿じゃないと、ここは狭いし。

彼が萎縮してしまうだろう?」



おじさんは、意外と気さくに答えた。


そして、渚に語りかける。



「龍神剣が出現してしまいそうな気配を感じて、急いだのだよ。

まだお前は、何も知らないから」


「え……?」


「私もこの間、倶利伽羅に聞いたばかりだがね」


そしておじさんはチラリと、俺の方を見た。


意外に、優しい表情で……。


< 336 / 449 >

この作品をシェア

pagetop