右手に剣を、左手に君を
「久しぶりだな、善女竜王」
おじさんに声をかけられ、渚は、
「はいっ」
と、小さく答え、
土下座のように深く、頭を下げた。
どうやら、本気でこのおじさんは海神らしい。
「海神様……どうして、こちらへ。
そんな、人間の姿で……」
リカさんがおそるおそるたずねる。
「いや、だって、人間の姿じゃないと、ここは狭いし。
彼が萎縮してしまうだろう?」
おじさんは、意外と気さくに答えた。
そして、渚に語りかける。
「龍神剣が出現してしまいそうな気配を感じて、急いだのだよ。
まだお前は、何も知らないから」
「え……?」
「私もこの間、倶利伽羅に聞いたばかりだがね」
そしておじさんはチラリと、俺の方を見た。
意外に、優しい表情で……。