右手に剣を、左手に君を


「彼から説明を受けるより、私が見せた方が早いだろう。

倶利伽羅は人の記憶を見ることはできても、

再生する事はできないから……」


「ちょっと、待ってください。

いきなり来られて、何をおっしゃってるのかいまいち……」



渚は交互に、俺とリカさんの顔を見る。



「……千年前、あなたが龍神の剣を産んだ時の記憶を、

海神様が見せてくださると、おっしゃってるの」


「えっ……」


リカさんの言葉に、渚は渋い顔をした。


玉藻に記憶を引きずり出されたのが、

トラウマになっているのかもしれない。



「コウくん……」



渚がこちらに迷った視線を送る。



「見ておいてほしい。

大事なことだから」



俺はそれだけ、言った。


すると渚は承知したように、ゆっくりとうなずく。







< 337 / 449 >

この作品をシェア

pagetop