右手に剣を、左手に君を
「では……」
海神もうなずき、その大きな両手を広げた。
その瞬間。
岩に囲まれていた洞窟が、なくなった。
代わりに、俺が夢の中で見た景色が浮かぶ。
木々に囲まれた、森の中……。
空に、黒い渦……空亡が浮かんでいた。
「!!」
「大丈夫、これはあなたの記憶。
あの空亡は、過去の映像よ」
焦った俺に、リカさんが説明してくれる。
きっと、海神が俺たちの意識だけを、記憶の中に連れてきたんだ。
しかし、足元で踏んだ草の感触も、空亡の恐ろしさもリアルすぎて、
一瞬現実かと間違いそうになった。
「……忠信様!!」
渚が、声を上げる。
背後を振り返ると。
傷ついた、千年前の三剣士が、そこにいた。