右手に剣を、左手に君を


「では……」


海神もうなずき、その大きな両手を広げた。


その瞬間。


岩に囲まれていた洞窟が、なくなった。


代わりに、俺が夢の中で見た景色が浮かぶ。


木々に囲まれた、森の中……。


空に、黒い渦……空亡が浮かんでいた。



「!!」


「大丈夫、これはあなたの記憶。

あの空亡は、過去の映像よ」



焦った俺に、リカさんが説明してくれる。


きっと、海神が俺たちの意識だけを、記憶の中に連れてきたんだ。


しかし、足元で踏んだ草の感触も、空亡の恐ろしさもリアルすぎて、

一瞬現実かと間違いそうになった。



「……忠信様!!」



渚が、声を上げる。


背後を振り返ると。


傷ついた、千年前の三剣士が、そこにいた。





< 338 / 449 >

この作品をシェア

pagetop