右手に剣を、左手に君を
もちろん、夢の中の人物達には、俺たちは見えない。
これは、記憶を再生しているだけ。
現場に、渚以外はいなかったのだから。
「善女、あちらを見なさい」
「……!」
海神が指差した方を見て、渚は言葉を失った。
そちらから、千年前の自分が走ってきたからだ。
銀色の髪を風になびかせ、簡素な着物で……。
「コウくん」
今の渚が、俺の腕にすりよった。
まるで、過去の自分達を、
怖いものでも見ているように、その目は怯えていた。
俺はなるべく優しく、声をかける。
「大丈夫。
大丈夫だよ……」
そうこうしているうちに、過去の渚は忠信達の元へたどり着いた。
傷だらけの彼らを見て、涙をにじませる。
そして……。
何かを決意したような目をしたかと思うと。
その霊力を、小さな胸に集約しだした。