右手に剣を、左手に君を


もちろん、夢の中の人物達には、俺たちは見えない。


これは、記憶を再生しているだけ。


現場に、渚以外はいなかったのだから。



「善女、あちらを見なさい」


「……!」



海神が指差した方を見て、渚は言葉を失った。


そちらから、千年前の自分が走ってきたからだ。


銀色の髪を風になびかせ、簡素な着物で……。



「コウくん」



今の渚が、俺の腕にすりよった。


まるで、過去の自分達を、

怖いものでも見ているように、その目は怯えていた。


俺はなるべく優しく、声をかける。



「大丈夫。

大丈夫だよ……」



そうこうしているうちに、過去の渚は忠信達の元へたどり着いた。


傷だらけの彼らを見て、涙をにじませる。


そして……。


何かを決意したような目をしたかと思うと。


その霊力を、小さな胸に集約しだした。


< 339 / 449 >

この作品をシェア

pagetop