右手に剣を、左手に君を


目の前に映画のスクリーンのようなものが、広がる。


そこに、途切れ途切れの忠信の記憶が、

映画の予告編のように流れた。


空亡に攻撃し、攻撃されかえし……。


スクリーンには、剣の描く軌道や、

空亡が放った、魍魎の首が飛ぶように過ぎ去っていくだけだった。



「肝心なのは、ここからだな」



海神が言うと、またもとの森の中に、意識が戻ってくる。


いきなり射す、日光のまぶしさに慣れてきた俺たちが見たのは。


息絶えそうな渚にかけよる、忠信の姿だった。



渚の指先は透き通り、光の粒になりつつある。



「忠信様……」


つぶやいたのは、今の渚か、過去の渚かわからなかった。


忠信は、もう声を出す力もなく、朦朧とする渚を抱きしめる。


そんな時、傍らに置いていた龍神剣が、忠信に話しかけた。



《父上……》


『……龍神剣、お前か?

私を父と呼んだのは……』


《左様です。

母上はあなたのために、私を産んだ。

そしてその役目を果たしました》



その言葉を聞いた忠信の目から、涙が溢れ出す。






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