右手に剣を、左手に君を
今の渚が、思わずその光景に目をつぶる。
そんな彼女に、海神が言う。
「良く見るのだ、善女」
龍神剣は、過去の彼女を傷つける事なく。
ずぶずぶと、その身体に沈んでいく。
過去の渚は、何が起こっているかわからないという顔をしていたが……。
すぐに、気を失って、まぶたを閉じた。
その長いまつげの間から、透明な雫が一筋。
なめらかな頬を、滑っていった。
他の二人が、経を唱える。
洞窟の壁から岩が剥がれ、祠の形になっていく。
忠信は彼女を、そこに座らせた。
岩は彼女の足下から繋がり、割れ目が塞がっていく。
『渚……!』
自分と同じ声の、忠信の嗚咽が反響する。
『すまない……!すまない……!
私には、こうする事しかできない……!』
何度も謝った忠信の顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。
それを見つめる、今の渚も……。
最後に忠信は、過去の渚の小さな顔を、両手で包み込んだ。