右手に剣を、左手に君を


海神が、ゆっくりと両手をあげる。


すると、過去の三剣士の姿は、あとかたもなくなった。


岩の祠も、俺が封印を解放した時、壊れたままだ。


戻ってきた……。


気がつけば、俺は泣いていた。


胸にナイフを突きたてられたように、痛かった。


忠信の記憶を初めて見た渚は……。


力が抜けていくように、地面にぺたりと座り込んでしまった。



「忠信……様……」


「わかったか、善女。

お前は過去、龍神剣を産んで、消滅しかかったのだ。

今回もこんな事になる前に、海に帰ってまいれ。

私も、事情を知らずに追放なんて、大人気ないことをした……」



しかし渚は、

海神の言う事など、一つも耳に入っていないようだった。



「忠信様あぁぁぁぁぁ……」



名前を叫ぶと、その場に伏して、泣き続けた。


見ていられなかった俺は、彼女に手を差し出す。


すると渚は俺の胸にすがりつき、

悲鳴をあげるように、泣いた。


リカさんも海神も、

しばらく黙って、その様子を見ていた。



< 346 / 449 >

この作品をシェア

pagetop