右手に剣を、左手に君を
海神が、ゆっくりと両手をあげる。
すると、過去の三剣士の姿は、あとかたもなくなった。
岩の祠も、俺が封印を解放した時、壊れたままだ。
戻ってきた……。
気がつけば、俺は泣いていた。
胸にナイフを突きたてられたように、痛かった。
忠信の記憶を初めて見た渚は……。
力が抜けていくように、地面にぺたりと座り込んでしまった。
「忠信……様……」
「わかったか、善女。
お前は過去、龍神剣を産んで、消滅しかかったのだ。
今回もこんな事になる前に、海に帰ってまいれ。
私も、事情を知らずに追放なんて、大人気ないことをした……」
しかし渚は、
海神の言う事など、一つも耳に入っていないようだった。
「忠信様あぁぁぁぁぁ……」
名前を叫ぶと、その場に伏して、泣き続けた。
見ていられなかった俺は、彼女に手を差し出す。
すると渚は俺の胸にすがりつき、
悲鳴をあげるように、泣いた。
リカさんも海神も、
しばらく黙って、その様子を見ていた。